2011320
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再臨界が起こる可能性について:吉岡律夫・(株)日本システム安全研究所

Ver.1.1 (110320-01:14, Updated: 110320-15:04)

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吉岡律夫(よしおか・りつお)

(株)日本システム安全研究所・代表取締役社長
1970年に(株)東芝に入社し、原子力事業部にて原子炉設計や安全解析に従事。
1998年に(株)東芝・情報制御事業推進室にて、機能安全事業を担当。
2004年に退社。
2005年に(株)日本システム安全研究所を設立し、代表取締役社長に就任。
2006年に(株)日本機能安全の発足と共に取締役に就任。
現在、機能安全規格に関する教育研修などに従事。
原子力学会会員、失敗学会会員

再臨界は起こらないと考える理由

 原子炉、使用済み燃料プールの様子を含めて、「再臨界(原子力発電中のように核燃料の核分裂反応がどんどん進む状態)について」説明します。

 そもそも今回の様な軽水炉と呼ばれる原子炉が臨界になるには、3つの条件が必要です。その3条件とは:

(1) 約1cm直径の核燃料棒が、約1.5cm間隔で並んでいること

(2) 核燃料の集合体が、水で満たされていること

(3) 制御棒が引き抜かれていること

この条件が全て揃わないと、臨界にはならないのです。

したがって、次の様なことが言えます。

*原子炉内の核燃料は制御棒で抑えている限り、臨界にならないでしょう

*使用済み核燃料は、水がない状態では臨界にならないでしょう

プール内の使用済み核燃料について、4号機の使用済み燃料はプールに水がないので、臨界になりません。目視でプールに水があるとの情報がありましたが、東京電力に確認した所、それは燃料が入っていないもう一つのプールの水でした。

*3号機のプールは水がありますが(水蒸気が上がっているので水があります)が、臨界になりません。それは、核燃料は適切な距離をあけて並べられていないと臨界にならないからです。

以上の理由から、私は福島原発で再臨界事故は、あり得ないと考えます。

拡散する放射性物質について

稼働していた原子炉1〜3号機は、原子炉格納容器が壊れていないかぎり、放射性物質は外に出ません。

 使用済み燃料は外気に触れているので、ここから放射性物質が少しずつ外に出ます。これらの放射性物質のうち、軽いものは、水素爆発でとんでしまい、すでに、拡散しています。これ以上の爆発がなければ、今以上に放出されるということは、ないでしょう。放射線量はこれ以上高くならないと思われます。

 また、放射性物質のうち重いもの(人体に影響が大きいウラン、プルトニウム、コバルト)は、現在ほんの微量は飛んでいますが、重いのでプールの底にたまっていて、再臨界事故にならない限り大量に拡散することはありません。再臨界事故はあり得ないので、これ以上拡散する心配もないと考えます。

 

参考:吉岡氏による記事(PDF) 3月19日第7報 臨界事故が起きない理由

 

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専門家によるこの記事へのコメント

  1. タコ

    続きです。

    「小出裕章さんの4/8のお話について
    http://www.videonews.com/news-commentary」

    のような場合では高速中性子でもウラン235を燃料集合体にある時と比べ高い確率で核分裂させる。

    間違っていたら訂正お願いします。

  2. タコ

    当サイトのことでは ありませんが 他所で見かける間違い?について
    というよりも知識のすり合わせが大事な件について

    ウラン235は(85%の確率で)熱中性子で核分裂
    ただし高速中性子でも当たれば核分裂する
    だが滅多にあたらない
    ウラン235が熱中性子を吸収するのは原子核の引力=強い相互作用で引き寄せられるから。人工衛星のスピードが落ちたら地球の重力で落下するのに似ている。
    よって水を抜けばウラン235は核分裂しないと仮定して良い。
    プルトニウムは水の有無に関係なく一ヶ所に臨界量以上集まれば勝手に核分裂する。

    プルトニウム240は中性子が当たらなくても自発性核分裂をする。

    核分裂生成物も崩壊の過程で高速中性子=遅発中性子を放出する物がある。

    JCO臨界事故は最初はウランの核分裂で臨界したが以後は核分裂生成物の崩壊=遅発中性子で臨界を維持した
    これが爆発しなかった理由。

    ウラン238は1MeV以上の高速中性子で核分裂する。また熱中性子を吸収してネプチウムからプルトニウムに変わる。

    プルトニウムは熱外中性子以上の運動エネルギーを持った中性子で平均3個の中性子を放出する。
    プルトニウムは、核融合の過程で放出される高速中性子で分裂させられると平均5個の中性子を放出する。

    間違っている部分は訂正お願いします。

  3. タコ

    A、国や保安院、東電の対応についてどう思われますか?
    Q、既に起こった事を非難するつもりはありません。というよりも皆さんの方が詳しいのでは?
    国民に無用のパニックを起こさないという点では良くやっていると思われます。
    ただ避難地域の設定は甘いですね。

    A、どこが甘いのでしょうか?
    Q、「チェルノブイリでは原子炉に近い地域=高濃度汚染地域よりも離れた地域の方=低濃度汚染地域がガンの発生率が高いので、放射性物質とガンとの因果関係ははっきり確定されていない」などという、「チェルノブイリ20年目の真実」というトンデモ報告書に基づいたトンデモ専門家の助言に従っているからです。
    強制的に避難させられた人々に対し、チェルノブイリから少し離れた地点の人々は避難もせずに普通に暮らしていたから、ガンの発生率が高いのは当たり前です。
    科学的なセンスの無い人間が専門家と称する人々に多いのがこの国の不幸です。

    ――――――

    1号機建屋破壊のメカニズムを推定しました。あくまでも仮説です。

    1.使用済み核燃料プールから露出した燃料が核分裂 キセノンやセシウムが気体となって放出される。
    2、建屋上部に溜まる
    3、キセノンはセシウムに崩壊して、冬の冷気で冷えた天井に雲のように溜まる。
    4、水の蒸気が雲のなかで氷の結晶=雪を生成するようにセシウムが固体に
    5、雪が降るように固化したセシウムが大量に使用済み核燃料プールに落ちる。
    6、水と激しく反応して爆発。

    動画サイトでアルカリ金属の爆発で検索して見れば、煙の上がりかたがほぼ同じですね。
    問題は弱い建屋上部を余裕で吹っ飛ばしても 使用済み核燃料プールの浅いほうの厚いコンクリートをぶち壊す力があるのか?
    という問題です。

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