2011316
各専門家のコメントは、その時点の情報に基づいています。
SMCで扱うトピックには、科学的な論争が継続中の問題も含まれます。
新規データの発表や議論の推移によって、専門家の意見が変化することもありえます。
記事の引用は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

原発危機に関して:英国SMC発・専門家コメント

 

Ver.1.0 (Updated: 110317-23:19)

これはScience Media Centre (UK)によるサイエンス・アラートの翻訳です。

※あくまで、コメント時にそれぞれの専門家が把握していた状況に基づいています。ご注意下さい。

記事の引用・転載(二次使用)は自由ですが、末尾の注意書きもご覧下さい。

<海外SMC発 サイエンス・アラート>

原子炉・放射線に関する海外専門家コメント

 

今回の災害に関して、英国のSMCが収集した専門家コメントをお送りします。(コメント発行から時間が経っており、あくまでその時点の情報に基づくコメントであることにご注意下さい)

 

2011年3月15日 3:10 AM

ジム・スミス博士(Dr Jim Smith)

英国・ポートスミス大学、地球環境科学研究科、環境物理准教授

「現時点で一番のリスクは、市民が原発事故に対してパニック状態に陥ることだと思います。放射線のリスクに集中することは重要ですが、事故によるストレスやパニックが、被ばくと同程度、もしくはそれ以上に人々に悪影響を与えるということが過去の経験から明らかになっています。チェルノブイリ事故の後でさえ、発電所のすぐ近辺に住んでいた人たちをのぞくと、集団レベルでは健康に深刻な悪影響はありましたが、個人へのリスクは極めて低いものでした。ですから、たとえチェルノブイリ事故と同規模の炉心溶融が起こっても、発電所のごく近辺を除く地域に住む人々への影響は小さいだろうと考えられます。」

 Dr Jim Smith is Reader in Environmental Physics, School of Earth and Environmental Sciences at the University of Portsmouth:

"In my opinion, a key risk at present is public panic in response to this incident. It is important to focus on the radiation risk, but experience from past nuclear incidents has shown that the stress and panic caused by these events can be as bad as, or worse than, the direct threat from radiation. Even after Chernobyl, although there were some severe health effects at the population level, the risk to individuals, except within the immediate vicinity of the plant, was very low. So: for people outside the immediate vicinity of the plant, even in meltdown on the scale of Chernobyl, the individual risk is likely to still be very low."

 

 

2011年3月12日 5:22 PM(現地時間)

マイケル・リークス教授(Professor Michael Reeks)

 英国・ニューキャッスル大学、機械・システム研究科

米国原子力協会のための背景説明:「日本で起きた地震と津波は歴史的な大災害です。犠牲者は恐らく何千人に上ると思います。完全な情報はまだ集まっていませんが、地震と津波による死者や建物の崩壊の規模は、原子発電所の事故によるそれを大きく超えるものになると思います。

 

原子炉炉心溶融というのは大惨事ですか?

「必ずしもそうではありません。原子炉には多重の安全システムが組み込まれています。万が一、原子炉内の燃料が融けるようなことがあっても、放射性物質が環境中へ放出されることのないように原子炉は設計されています。[今回の福島原発事故で]このような事態が生じたとしても、元々これほど規模の大きい自然災害を想定して設計されていないので、放射性物質を中に封じ込めておくだけでも 「成功」だと言えます。原子力発電業界は今回の事故から学習し、将来的により安全な発電所を再設計するでしょう。」

 

Prof Michael Reeks at the School of Mechanical & Systems, University of Newcastle, provided a backgrounder for the American Nuclear Association:

 “The Japanese earthquake and tsunami are natural catastrophes of historic proportions. The death toll is likely to be in the thousands. While the information is still not complete at this time, the tragic loss of life and destruction caused by the earthquake and tsunami will likely dwarf the damage caused by the problems associated with the impacted Japanese nuclear plants.”

 

Is a nuclear reactor "meltdown" a catastrophic event?

“Not necessarily. Nuclear reactors are built with redundant safety systems. Even if the fuel in the reactor melts, the reactor's containment systems are designed to prevent the spread of radioactivity into the environment. Should an event like this occur, containing the radioactive materials could actually be considered a "success" given the scale of this natural disaster that had not been considered in the original design. The nuclear power industry will learn from this event, and redesign our facilities as needed to make them safer in the future.”

 

 

 

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専門家によるこの記事へのコメント

  1. tanaka

    皆様、多くのコメントありがとうございます。
    このコメント欄に頂いた内容は、SMCでは直接回答は致しませんが、メディア関係者、及び執筆者等にお伝えして参りました。
    しかし、状況は次々に変化しております。最初に頂きました専門家のコメントも、その後の変化をフォローしきれていないこともあり、また全ての専門家が記事を適宜更新できるとは限りません。
    協議の末、今後は基本的に「新規記事に関しては、更新後1週間はコメント欄を開いておき、その間に頂いた質問は適宜コメント者にも告知(回答できる時間があれば追記)、ただし一週間の後は閉鎖する」という形式を採ることにさせていただきます。
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